伝え方が9割(佐々木圭一)

友達の家でチラッと読んでみたらいいことが書いてあるように思ったので、メモ。「伝え方には技術がある」という考えに基づき、心に響く言い方やそのポイントが紹介されている。そのポイントとは、思いついたことを口にする前に、相手の頭の中を想像し、相手のメリットと一致するお願いをすること。なるほど!メモしたい!と思った具体例が、飛行機が空港に到着した慌ただしい状況でかかった次のアナウンス

 「後方のお客様、お時間がかかってしまいますので、ごゆっくり、お仕度ください」

 ストレートに言えば「後方のお客様、前のお客様が出られるまで、お席でお待ちください」となるところだが、「ゆっくり支度」と言うことでサービスを受けた感じになる。これはお願いを「相手にとって好ましいこと」を通して伝えるというパターン。他のパターンとしては、「相手にとって嫌なことを回避できる」というメリットを通じて伝えるパターン(例:「芝生に入らないで」→「芝生に入ると農薬の匂いが付きます」)、「認められたい欲」を満たす、「あなた限定」「チームワーク化」「感謝」が伝え方の切り口として紹介されている。いずれにしても、相手の立場に立って、相手のメリット(欲求を満たす)を押し出すことがポイントとなる。確かにメッセージの受け取り手の印象は随分と違う感じがする。人間の心理をうまく利用していると言えるだろう。

ここまではイエスを引き出すための技術。次に紹介されているのは「心を動かすエネルギー」のある言葉の作り方。次のような手法が紹介されている。サプライズ法(適当なサプライズワードをくっつける。「京都、行こう」→「そうだ、京都、行こう」)、ギャップ法(反対の意味を持つワードと釣り合わせることで、元のワードを強調する。「これはあなたの勝利だ」→「これは私の勝利ではない、あなたの勝利だ」)、赤裸々法(実感をこめ、言葉を生き生きとさせる。「息ができない」→「あれから思うように、息ができない」)、クライマックス法(集中力を高めるために挟む。「これだけは覚えていて欲しいのですが…」「ここだけの話なのですが…」など)

有名なフレーズや印象的なフレーズは、それだけのパワーを生み出すためのなんらかのテクニックを含んでいることに気づけた。それを理論化しようとしたのはスゴいことだし、最初に触れたように、これらを「スキル」として身につけることができるならば、是非使ってみたいものだ。似たような話になるかもしれないが、人の心理をついてうまく問題解決を目指す「仕掛学」なる本をこの前知ったので、また読んでみたい。ラグビーの戦術はラグビーの原理原則に基づいて展開される。人間社会を成り立たせているのはやはり人間であるので、人間の持つ本能や習性に基づいて物事を進めていくという考え方は有効であるように思う。