数学ガール ガロア理論(結城浩)

すごく有名でふわっとは知っているが、ちゃんとわかっておらず、いつか理解したいと思っていたガロア理論。講義でガロア理論が登場し、人生で最も(方程式の)ガロア理論に接近した感じがしたので、今度こそは1冊理解しようと決意し3度目の挑戦。対称性が重要であること、方程式を解くことは分解できるまで体を拡大していくこと、体が拡大するのに群の縮小が対応することなど、なんとなくは説明できるがなんとなくつかめていないところから一歩前進するのが目標。1、2回目にはスルーしていたが、まず気づけたことは解と係数がこんなに本質的な性質だということ。方程式の解の公式とは、解を方程式の係数で表すことである。

解と係数の関係から、解の基本対称式は係数で表せる。つまり解の対称式は係数で表せる。解の対称式は解を交換しても不変な式だから、解を交換しても不変な式は係数で表せる。」「方程式を解くことは解の交換と関係している。」

こういう理屈で方程式を解くことが解の交換とからみ、解の交換を表す群と結びつくことが納得できた。

方程式を代数的に解くこととは、方程式の係数体から始めて、冪根の添加することで最小分解体にたどり着くこと。

また2次方程式の判別式は  \alpha-\beta というそのままでは対称ではないが、2乗することで対称になる値であって、その平方根を使って体を拡大(2次の拡大)することで、その方程式を分解できるようなること。最小分解体に興味があるので、その共役にも興味がある。数学の本だとガロア群は有理数体上の自己同型群として定義されることが多いが、この本では「既知ならば不変、不変ならば既知」を満たすような置換群のことというガロアの論文の通りの定義を用いている。

根が既知とは、根が係数体に属していること、すなわち根が係数の加減乗除でかけるということ。そのとき方程式は代数的に解ける。方程式のガロア群が単位群なら(根を置換しないので不変、)有利式は既知になる。

体を拡大すれば(既知の値が増えるので)交換してもいい元が減るからガロア群は小さくなる。ガロア群を(ある条件を満たしながら)単位群まで縮小できれば、その方程式は解ける。こうしてガロア群で解けるかどうか判定できることがわかる。体の拡大がガロア拡大ならそれは元のガロア群の正規部分群になり、これが一対一に対応する。言っていること自体は今までと変わらない気もするが、実感がかなり強まっている気がする。この成長は3次方程式、4次方程式を解くプロセスが体や群に対するどのような操作に対応しているのかを考えたのが良かったと思う。解の公式を導くときに(一見唐突に)でてくるやや複雑な式は特定の根の置換(対称群の部分群)により不変な式であり対称ではないものの一定の対称性を持った式。それを使った拡大体は中間体となる。

ガロア理論群の世界と体の世界を結ぶ橋であるとこの本でも強調されている。2つの世界がつながるところが面白いという考え方は強く共感する。ただこの本だけでガロア理論理解するのは厳しいかな?かたわらに数学の本を一冊用意して読んだ方がいいかもしれない。ともあれ、ガロア理論の理解がかなりいいところまで来ている気がするので、ぜひあと一歩理解を深めたいところ。こんなことを言っても仕方ないが、ガロアよりも2年長く生きて、やっとこの理解度というのは厳しい現実…