教養として知っておきたい地政学(神野正史) 感想

勉強が好きになったきっかけともいえる地政学の本。ナポレオンは「その国の地理を理解すれば、その国の外交政策を理解できる」と言ったそうだが、この本を読むとその通りだと思う。国ごとに地理的条件は異なるが、その中で、(地政学的)リスクを軽減し、自国を豊かにしたいという思いは共通しており、結果として様々な問題(衝突)が生じている(または生じてきた)ことが見えてくる。例えば日本はちょうどよく海に囲まれている(攻めるのには広いが、人や文化は伝えられる広さ)ために、直接攻め込まれ、侵略されることはなかったが、大陸からの文化や技術を受け緩やかに発展を遂げた。ヨーロッパが大陸に進出し始めたときも日本は遠い上、資源にも乏しかったため、すぐに標的になることはなかった。ペリーの来航をきっかけに明治維新がおき、国際舞台に投げ込まれた明治政府は朝鮮半島の支配を目論み日清戦争に勝利、南下を目指すロシアの東側防波堤としての役割を期待されたことから、日英同盟を締結、協力を得て日露戦争に辛勝。これは地政学の言葉ではランドパワー国家(ロシア)の膨張を食い止めるためシーパワー国家(日、英、米)が連携したと見ることができる。第一次大戦をきっかけに大陸に進出、対立を深め孤立、第二次大戦で大敗。ランドパワーとシーパワーを同時に相手にして拡大を図るという無謀な戦略が失敗に終わった。戦後は共産主義陣営に対する防波堤という地政学的重要性からアメリカの保護下で発展を遂げた。現在も地理的条件から沖縄には基地が置かれているがアメリカの影響力は減少傾向、一方中国が海洋進出を目論む(ランドパワー国家からシーパワーを志向する)ことで日本のシーレーンが脅かされている。ロシアや韓国といった隣国とも問題を抱えているが、その原因は地政学の視点で考察すれば見えてくる。

地政学は世界情勢を理解するのに必要な視点を提供してくれる。いろんな国や人の思惑には、必ずある種の合理性があり、それを見抜こうとする姿勢が大事だと学んだ。