いじめを本気でなくすには(阿部泰尚)感想

教採の面接で聞かれるような(教師なら知っておくべき)テーマについて見識を深めたいシリーズ。タイトルでわかるようにいじめの本。少し前に読んだ本で”立派なしつけが犯罪者を育てる、子供が「しんどさ」をため込まないような工夫が必要”というような本を読んだので、それを踏まえつつ読んだ。前半はいじめを取り巻く環境(低年齢化、ネット、全体を通し増加傾向であることなど)学校やいじめ対応、その仕組み(教育的アプローチの限界、隠蔽体質、いじめの軽視など)の問題点について。おそらく正しい批評がなされているのだが、だよね〜って感じでそれ以上は何も思わなかった。著者の職業は探偵で、そういう事なかれ思考停止に陥っている学校現場に証拠を集めて突きつけ、行動を起こしてもらい解決に導く、実際にうまくいった事例もいくつか挙げられているが、アピールかな?と感じてしまう。こういう力づくのやり方で本当に解決したのか気になるくらいで、読むのをやめようかという感情もよぎったが一応最後まで読んだ。ただ最後まで読んでみると勉強になったこともあった。著者のやり方は証拠を集めて突きつけて事実を認めさせやめさせ反省を促す、というやり方が主で、当然逃げようもないので加害者側は認めざるを得ない。それと”立派なしつけ〜”の本にあるような「しんどさ」を取り除くアプローチを組み合わせると有効そうであるように感じた。そしてこのやり方でもう1つ有効だと思ったのは親に対するアプローチで、親や社会の歪みがいじめの原因になっていることはこの本でも触れられているが、いじめの話をしても「うちの子がいじめなんてするはずがない」と聞く耳を持たない親がよくいるそうで、そういう親には証拠を突きつけて認めてもらう必要がある、というところである。親が子供のことを全部知っているということはほとんどなく、知ったつもりになっていることがほとんどである。我が子がいじめの当事者になると思っていない親が多いということなので、親に当事者意識を持ってもらい、一緒に解決に向かってもらうために必要なステップであると感じた。

最初の方では辛口なことを思ったが、”いじめを成功体験にしてはいけない”と述べられているように、法律に基づいて毅然と対応することも必要だろうと最終的には思い至った。人の集団があればいじめは起こってしまう、だからなるべく早くその芽を摘むことが大切である、そのための体制の整備、法整備、子供を取り巻く親や教員の成長が求められていると思った。最低限の法律は理解しておきたい。今をごまかしても本当の意味で子供のためにならない。いじめの問題に限らないが、法律の条文にもあるように何が一番子供のためになるのかを考えて対応することが大切だ。