これでいいのか島根県(鈴木ユータ・鈴木士郎)

「なんでもかんでも神頼み!?」などという帯がついた本書。最近島根発信系youtuberを見て、島根のことを全く知らないことに気づき島根を見つめ直す意味で手にとった。「島根の全てがわかる」と書いてあるが、地域批評シリーズということで島根のヤバさを面白おかしく紹介しているのかな〜くらいの感じで読み始めた。読んでみると、実際に現地に行ってみて感じたことや、種々のデータ、歴史、近年の取り組み、地域の特徴など網羅的に書かれていて島根面白い…と思うに至った。また、批判だけではなく「こんなふうにしたらどうだろう」というような提案や現状の分析もあわせてなされており、なるほどと思うことも多くあった。そして所々クスッと笑ってしまうような表現もあり、あっという間に読み終えた。島根の人にも、それ以外の人にも読んでほしい1冊。行政の人たちはこの辺の情報知っているのだろうか?知らないなら直ちに読むべし。

神代や古代の逸話は有名だが、南北朝時代、旧三国時代から平成の大合併に至るまでの歴史はほとんど知らないことも多く、とても興味深かった。その都度イケそうな産業をやったり、長いものに巻かれたり、時々歯向かったり、内部で分裂したり。その歴史があって今の島根があるのだなぁと感じられたし、これをもっと早く知っていれば島根をもっと好きだったのにと思った。荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡は有名だけど、あれが古代出雲王朝の存在を決定づけたとは知らなかったぞ(笑)。

時代が進むにつれて島根は次第に取り残されていく。「陸の孤島」などと言われてしまうほどの交通の不便さがその大きな要因の1つである。一方で、その交通の不便さが昔ながらの街や風習を残し、地域ごとの特性を生み出した。その特性をうまく生かしていくことが今後の課題になるだろう。(とはいえもうちょいインフラ整えて欲しい)

人口減少で基本的に苦しいのは間違いないが、様々な魅力的な取り組みがなされていて、(空振りに終わっているものもあるけど)それなりにうまくいきそうなものもあることを本を読んで知った。(松江や大田のIT関連企業の誘致、江津のビジネスコンテスト、雲南の人材育成、美郷町のドローンを使った先進的な取り組みなど)これをうまくつなげて育てていけば島根もまだまだ輝けるかもしれないと思わせる内容だった。

何をするのが日本のため、島根のため、地球のため、そして自分のためになるのか考えながら生きていきたい。あと、島根の中で行ってみたい場所がたくさんできたので順番に見て回りたいなあ。面白そうだから鳥取の本も買ってみようか。