START UP(ダイアナ・キャンダー)(牧野 洋 訳)感想

アントレプレナーシップ概論という講義をとることになり、その教科書として指定されたのが本書。教科書と言いつつも内容としては小説。起業したがうまくいっていない主人公が、ポーカーの大会に参加したのをきっかけになんやかんやあって自分の間違いに気づき、やり直しを目指す物語。読者はストーリーを追っていくだけで、その主人公を通して起業に必要な発想や考え方を学べるという仕様。あと、シンプルに物語として面白い。起業は不確実な未来を描こうとすることであって、それがポーカーの不確実さと重ねられ、全ての情報が分かっていない状態でどう行動するか、という起業にかかわらず必要な力も学べるいろんな人に読んで欲しい1冊。
起業する内のだいたい75%は成功できずに終わるそう。うまくいく確率を高めるための方法として4つの原則が紹介されている。その他起業するとき重要なポイントがいくつも込められている。

  • スタートアップの目的は顧客を見つけることであって、商品を作ることではない。
  • 人は製品やサービスを買うのではなく、問題の解決方法を買う。
  • 起業家は探偵であり、占い師ではない。
  • 成功する起業家はリスクを取るのではなく、運を呼び込む。

人間は極めて非合理的な生き物。ゆえに人を相手に商売をするとき、自分が合理的だと思っても机上の空論になりかねない。検証が必要(仮説→検証 というサイエンスの手法)。事実を積み重ねることが大事。正解は顧客しか知らない。検証の段階では資金は最小限に。

この本を読んでいると自分にも起業できるような気さえしてくる。起業にも一定のやり方(ロジック)があることがまず驚きだった。以下は講義の内容だが今は知識が経済資源になる世界になった。PDCAサイクルは有名だが、不確実性が高い場合にはPLANの価値がそれほど高くない場合もある(計画することで、むしろ計画外が生まれる)。そのかわりに Act Learn Build (やってみて、そこから学んで、作り出す)というサイクルが紹介された。小さく失敗して学んで修正、こうしてどんどん対応していくやり方もありかもしれない。講義をとらなかったら出会わなかった本。これも予想外から学んだというアントレプレナー的な行動かもしれない。何かにいかせるかわからないけど。