科学的な適職(鈴木 祐) 感想

そろそろ就職をしなければならない年になってきたし、キャリア教育について知る必要があるなあということで読んでみた。(復習:文科省によるとキャリア教育とは「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」で、職業人としての能力開発という側面と自分の進路を自分で決めるという側面を持つ。)仕事選びは極めて重要だが、仕事選びに関する悩みを抱える人は多い。本書では「適職」を「幸福が最大化される仕事」と定義し、多くの研究・論文から適職に出会う確率を高めるためのポイントや方法が書かれている。人類が職業選びという課題を持つようになったのはここ最近であるため、職業選びに向いていないと前おきした上で職業選びの5ステップを紹介している。科学的と謳っているだけあって(適職を探すことだけでなく、もっと一般に意思決定において)なるほどと思うことがたくさん紹介されていた。
仕事選びで陥りがちな7つの大罪(好きを仕事に、給料、楽さ、業界業種、性格テスト、直感、適性にあった仕事)と仕事の幸福を決める7つの徳目(自由、達成、焦点、明確、多様、仲間、貢献)、取り除くべき悪(時間の乱れ、職務の乱れ)。7つの徳目は良い組織を作るためのポイントとも考えられそう。(裁量権を与え、達成感を感じられるようにし、報酬やゴールを明確に、細分化固定化するのではなくいろんなことをし、何人かの友達がいて、何かに貢献している実感を与える)逆に組織の一員のである場合には、それらが満たされるように考え方を変えていくことも必要かもしれない。

以下印象に残ったフレーズ

・ 仕事への情熱は、自分が注いだリソースの量に比例する。

・どんなエキスパートだろうと予測の精度はコイン投げと変わらない。有望な業種など予測できないし、個人の興味など予測できない。人生は予測不能の連続だから計画通り行くことは少ないので、事前に細かく決めるよりも、大まかな方向性を決めて、いろんな出来事に対応しつつ柔軟にキャリアを積んでいけばいい。(「キャリア・ドラフト」)

・先行きの不透明な現代においては偶然の重要性が高まってきた。

・無計画のまま享楽的に生きるのではなく、かといって適職の幻を追い続けるのでもなく、目の前の選択肢についてしっかりと考えたら、あとは人生の流れに身を任せる。

 前シャガクで読んだ「自由があることは一見良いように思われるが、自由があることで迷いが生じることもあるので一概に良いこととは言えない」というフレーズを思い出した。職業選択の自由と引き換えに、それで悩むことになったということか。考え抜くしかないのだなぁ。