「考える力」を身につける本(出口 汪)感想

情報化社会では、誰でも簡単に大量の情報を入手することができるようになった。膨大な情報に振り回されないために、自分に必要なものを見極め、何を得て、どう活かすかを判断するための論理力が必要であるとされている。また、他者との合意形成や知識を生きたものにする本物の記憶にも論理力が欠かせないという。筆者の出口さんは現代文のカリスマ講師で現代文を読み解くことを論理力と結びつけて述べられている。日本人が論理的に考えることを苦手としている理由や、「雪だるま式記憶法」などなるほどと思うことも多くあった。

 

印象に残ったフレーズ

  • いつも同じ角度からものを見、同じ表現をする。そしていつも同じものが見えていない。成功する人は新しいものを見る人ではなく、同じものを違う角度から見る人。
  •  視点を変えない限り対立が解消されることはない。視点を変えられるということは思考が柔軟ということ。
  • 現代文の問題を解くコツはレトリック(筆者が自分の主張を読者に印象付けるためのあらゆる手段)を見破ること。そのためには論理力が必要。
  • オリジナリティは真似ることから生まれる。理解することから独創性が生まれる。独創的な意見を持つには過去の研究成果を知らなければならない。
  • 考える力とは有機的な思考力。有機的であるとは様々な要素から成り立ち、それが全体として調和している様子。
  • 活字情報よりも映像情報の方が処理しやすい。なぜなら、創造的なプロセスを排除しているから。(活字では読んで自分でイメージを作っていく、映像ではすでにある(作られたイメージ)を一方的に受け取るだけ。)分かった気にはなるが、所詮気分で一晩経てば何も残らない。そこには論理がないから。論理のない、理解していないものは記憶に残らない。
  • 「キレる」という言葉の中には「他者」という概念がない。あるのは自分の感情と思い込みだけ。(想像力の欠如、自分の感覚というたった1つの視点でしかものを捉えられない)