7人制ラグビー観戦術(野沢武史)

オリンピックのセブンズにむけて7人制の本を買ってみた。あんまりセブンズのことは考えたことなかったので、結構面白かったし勉強になった。15人制と本質的な違いは人数が違うこと(アタリマエ)。人数が半分以下になることの影響はプレーできるプレーヤー(アライビングプレーヤーという)の人数についてシビアだということ。15人制で1人くらい休憩してても損失は15分の1(約6.5%)なのに対し、7人制では7分の1(約14%)の戦力ダウンなので影響が大きい。そのためDF側は

  • タックルした後すぐ起き上がる
  • パスしたプレーヤーはなるべく早くレシーバーの後方にポジショニングする

などの心がけによっていかに7人全員で守れる状況を維持するかが重要となる。(しかし7人で守ったとしてもDF1人あたり10mの横幅を守らなければならないのでどっちにしろキツイ。実際にはキック処理のため)そのように常にギリギリでプレーするため他人をカバーする余裕などないので、なんでもできて総合力の高いバランスのとれたプレーヤーが求められる。
プレーしているエリアに関係なく1発DFをブチ抜くとあっという間にトライまでもっていけてしまうので、15人制との戦術的な違いとしてはテリトリーよりポゼッションが優先されやすいということがあげられる。(DF1人あたりの守る範囲が広いためそういうことがしばしば起こる)。そのため15人制ではキックを蹴ってボールを渡す代わりにテリトリーをとることが良しとされるが、7人制でテリトリーをとるためのキックはあまり用いられない。

ここまでで読むとなんとなく攻撃側が有利なスポーツに思えるがそうはいかない。一般的にコンタクトが起こると攻撃側はボールをキープするためラックを形成することになるが、ラックを形成するともともとのボールキャリア、オーバープレーヤー、パスアウトするプレーヤーの少なくとも3枚のプレーヤーが必要となる。すると次の攻撃の準備ができるプレーヤーは4枚。それに対し守備側が頑張って7人ともDFラインに並んだとするとこの時点で4対7になってしまい攻撃側に不利な状況となってしまうので、攻撃側はあまりブレイクダウンを作らずに攻めるのがよいとされる。(実際の試合では4回に1回くらいの割合でラックでのターンオーバーが起こっている。ラックが1度も作られずに生まれるトライも多い。)このような理由によってボールキャリアーは何でもかんでも突っ込めば良いというわけにいかないので、下がって間合いを保ったり、パスを下げてでも態勢を立て直しチャンスを伺うことがしばしば行われる。(15人制でやったら高確率で怒られる。)

ATは横幅を活かしたいがDFは横幅を使わせたくない、ATはラックを作りたくないがDFはラックを作らせたい、DFはボールを取り返したいがそのために枚数を使うと取り返せなくなったときに次ピンチになってしまう等々の駆け引きが常に行われている。

ひとつひとつのプレーの派手さは知っていたが、身体能力だけではなく瞬時の判断とそれをチームのプレーにつなげていくための周りの連動、様々な駆け引きが詰まった14分間気の抜けないスポーツだと分かった。オリンピックに向けてセブンズも勉強していこう。(今年オリンピックできるんか?)